第6章 日常…?
それに、毛嫌いするわけではないけれど元公安として、警察官として、違法捜査をしているFBIという組織にいい気持ちは抱けなかった。
彼個人としてはとても頼りにしているけれど。
紙ナプキンに自分の番号を書き、ズズッと残りをストローで吸い上げる。
沖矢はもう終わっているのか腕を組み椅子に深く腰掛けこちらを見ていたが、その瞳は細くいまいち何を考えているのかよくわからなかった。
『ありがとう!はいこれ、わたしの番号だよ!』
「ありがとうございます。おや、もう16時ですか…。この後はどうしますか?」
『もう帰るよ!えっと…』
隣に置いている安室から与えられた真新しい黒猫のリュックから財布を出し代金を置くと、流石に予想外だったのかきょとんとした彼の表情を見て少し気分が晴れた。
「ここは僕に払わせてください」
『こういうことはきちんとしなさいって教わったよ?』
「誘ったのは僕ですから、これは次の機会までとっておいてください」
『…わかった。ありがとう昴さん』
小銭を葵の財布に戻しレジに行ってしまった沖矢を追いかけながら、次があるならもう少し楽しく飲みたいと願わずにはいられなかった。
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