第5章 ミステリートレイン
「……て、…ちゃ……っ!」
……な、に?…だれ?
「おい!葵!しっかりしろ!」
「葵ちゃん!!起きて!」
肩を叩かれ漸く薄く開いた視界には、険しい顔のコナンと灰原がいた。
『ん…哀、ちゃん?コナンくんも…。ここどこ?わたし…?』
「よかった!気が付いたのね。大丈夫?身体は平気?」
「7号車のB室だ。葵、なにがあった」
『トイレ行こうとしてたら…急に後ろから…』
…そうだ、眠らされて…。…っ!!
働きだした頭で灰原の姿を確認する。見たところ怪我はなさそうで、ほっと胸を撫で下ろして起き上がると彼女の手が背中に回り、礼を言ってゆっくりと体を起こす。
「後ろからか……手とか見なかったか?」
『ううん。手袋してたから…』
──ごめんね、コナンくん。あれはきっと透くんだから…。
そうか。と彼は灰原を見て頷く。
「葵ちゃん。いきなりで悪いんだけど、これからは博士と三人で暮らさない?」
知ったのか…、安室がバーボンであることを。
二人が考えていることはわかる。彼が葵を黒に染めるために引き取ったと思っているんだろう。だけど、今は離れるつもりはない。
それに…何故かベルモットに気に入られているようだし、彼女がどこで見ているかわからない以上、灰原の近くには行けない。
二人には諦めてもらうしかない。
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