第2章 出会い
とおるが安室透だとするならば、この女性との関係は何だろうか。
組織の人間?安室透の知り合い?降谷零の知り合い…公安警察の同僚?いや、この線が一番薄そうだ。そう簡単に繋がりを見せて良いものでないことを自分は良く知っている。
考えてもわからない正解に気づかれないように息を吐いた。女性が何をしたいのかはこの際置いておこう。警戒だけして、流れに身を任せてみるのも一つの策だ。
言い訳をして、葵の脳は考えることを放棄した。
「助けてあげるわ」
Sweetieと笑う女性を見つめ、黒髪ボブの女性の話を聞いたことがあったかと放棄したそれを呼び戻し記憶を遡る。友人の話では組織に居る女性は…キャンティ、キール、ベルモット、キュラソーの四人。
覚えていた特徴と合わせてもボブヘアー(?)はキャンティだけだが、確かキャンティには左目に蝶の刺青があるはずだが、目の前の女性の左目には刺繍の痕跡すらなくその線は消えた。
ふと葵の記憶の中にベルモットは変装の達人だと興奮気味に語る友人が現れた。
この女性がベルモットの変装ならば声が変わったことにも頷ける。葵にかまう理由は皆目検討も付かないが、組織の人間の可能性が僅かにでもあるならば用心するに越したことは無い。それにSweetieの意味も気になるところだ。
「来たわ」
女性をベルモットと仮定したと同時に葵の視界に白いRX-7が映る。運転席には金髪に褐色肌の所謂イケメンと呼ばれるであろう男性。教えられていた特徴とぴったりと重なる容姿に別人の線が消えたと希望を握り潰した。
«29歳アルバイター兼探偵って設定なのにすごい車乗ってるんだよ!»
今ならば共感出来る。確かにアルバイターが手を出すには厳しすぎると。
降谷と安室で車変えたりしないのかと男を案じながら目の前に止まった車にベルモット(仮)に手を引かれ近づき、共に後部座席に乗り込んだ葵を見た安室透の顔が僅かに、ほんの僅かにだが顰められた。
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