第5章 ミステリートレイン
背を向け続ける灰原に、流石にずっとこのままは不自然だと考えたとき、自分の赤が目についた。
『哀ちゃん?』
「えっあっなに?」
『どうしたの?怖いことでもあったの?』
「な、なんでもな…え?」
『よし、このメガネかけたらもう怖くないよ!似合うね、哀ちゃん!』
かちゃりとメガネを灰原にかける。意外とこれだけで意識は変わるものだ、彼女が少しでも安心してくれればそれでいい。
きょとんとした彼女は視界に映る赤に手を伸ばし、ふっと表情を緩め「ありがとう」と微笑んだ。
そこへ蘭に引きずられてきた毛利探偵と自己紹介を済ませ、全員で写真を撮ってから機関車に乗り込んだ。
―――ポーーーッ
『とぅあ!?』
「大丈夫ですか?」
「おめーなにやってんだよ」
灰原と世良を今日一日どうするか悶々と考えながら歩いていると自分の足につまづいた。今のは恥ずかしい…、穴掘りたい、スコップ欲しい、早急に…。
走り出した車体に揺られて暫く車窓の景色やお菓子を楽しんでいると、コンコンと来客を告げる音と共に一枚のカードがやってきた。
どうやら推理クイズの指示カードらしいそれに従い、捜査に乗り出そうと通路に出て歩いていたところで派手につまづいた。これは恥ずかしいと打ちひしがれていると、見かねたコナンと手を繋ぐことになってしまった。
…歩美にパタパタとスカートを叩かれ、情けなさにとどめを刺されている気さえしてきた。
お前ドジだな!と折れかけた心にハンマーを振り上げた元太を横目に、7号車のB室の扉を叩く。
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