第5章 ミステリートレイン
朝、白いフレアワンピースにキャメルのライダースジャケットを羽織り、赤いウェリントン型のメガネをかける。
蘭から渡したいものがあるから、今日1日遊ばないか。と連絡が入り、彼も1日仕事らしく「楽しんでおいで」と笑っていた。
『透くーん!どう?』
「ふふ。可愛いよ。たくさん歩くかもしれないから、靴はスニーカーにしようね」
「はーい!」
安室が選んだ白いスニーカーを履き、待ち合わせ場所へ向かった。
「あっ葵ちゃん!」
『おまたせっ!』
「別に待ってないわよ。ほら、手出して!」
園子の拳から葵の掌にころんと置かれたのは、変わった形のリング。繁々と眺めると、真ん中には列車…だろうか、が描かれている。
これは?と二人の顔を見上げると、ニンマリと笑った園子が葵の手を取った。
「これから一緒にミステリートレインに乗ろう!」
「行くわよ!」
本来ならあのキャンプの日に渡す予定だったらしく当日になったことを謝罪されてしまったが、それについてはこちらが悪いのだからと首を振っておいた。
東京駅に着き周囲を細かく観察していると、リングに描かれた列車に酷似しているディーゼル機関車の前に見慣れた姿があった。
『みんなー!』
「あっ!葵ちゃん!」
「おう!葵!待ちくたびれたぜ!」
「熱は大丈夫ですか?」
『うん!もう平気!』
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