第4章 新たなる
力強く、それでいてひどく安心する声に手を握り返し目を閉じた。彼の言う通り蓋をしてしまおう。今は黒い蓋だけだけど、これから沢山の色をかけていこう。
でも、きっと一番最初は彼の白。
□
眠る葵の涙を拭い、静かに溜息を一つ。
車内や待合室での彼女は目を閉じ、ぱっと開け降谷を見て、ほっと息を吐く。この繰り返しだった。そのストレスで熱が出たのだろう。そんな彼女が何を考えているかなんてすぐにわかった。その恐怖に震える体をこれ以上見ていられなくて、つい声を掛けた。
無責任なことを言った自覚はある。ずっとそばにいる。なんて約束できるような立場じゃないことはわかってる。それでも、この小さく優しい陽だまりが陰ることがないなら構わないと本気でそう思った。
『ん…とーぅく…』
「ああ、ここにいる。誰も君を置いていかないさ」
さらりと前髪を撫でると、スゥスゥと眠る葵の口元が弧を描がいた気がした。
□
目を覚ますと彼は普段通りに戻っていて、きっとあれが本来の降谷零の姿なんだろうなと胸の奥に刻み込んだ。
わざわざ作り直してくれた卵がゆを食べ、薬を飲み、また寝る。次に起きたのは夜で熱はだいぶ下がっていた。
『ごちそうさまでした』
「はい。じゃあ、お薬飲んでもう寝よう?」
『…あのね、一緒に寝てもいい?』
「いいよ。洗い物が終わったら行くから、枕もって先に横になってて」
『うん』
安室のベッドは優しくて柔らかい匂いがして、すごく落ち着く。葵には少し一人部屋は早かったのかもしれない。でも、これじゃあ本当に精神も退行してると笑った。
「おまたせ。はい、おでこ出して」
『ん』
「よし。じゃあ、おやすみ」
『おやすみ、透くん』
「良い夢を」
次の日、彼の熱心な看病のお陰で熱はすっかり引いていた。
新たなるfin.