第4章 新たなる
「新一兄ちゃんは10年前に父さんから、死体のそばにこの「死」って字を書く犯人はもう二度と現れないって聞いたって言ってたよ!」
「わたしも新一がそう言ってたの覚えてる!」
10年前の事件が事故で片付けられたと聞き、世良は詳細の書かれた紙束を取り出した。そこには亡くなった方の氏名や死因、第一発見者が5歳だったお寺の住職の一人息子であることや、犬を飼っていたこと、発見時の少年の行動などが記載されていた。
世良は第三者が少年が立ち去るのを待ち血文字を残したというが、園子は斜め上をいった。
「もしかしたらその少年なんじゃない?その血文字を書いたのって!」
「でも5歳の子だよ?「死」なんて漢字書けないんじゃない?」
「5歳…葵。君は死ぬって漢字で書けるのか?」
「そうよ!葵ちゃん5歳じゃない!」
『(あー…やっぱり、くると思ってたよ…)』
どうしよう…書けて当たり前なんだけども。知らないと嘘をつく?でもバレたときが面倒だし、書いたら書いたで少年も書けた可能性がぐんと上がる、それは避けたほうがいいと思う。純粋な5歳児は書けない、と思う。
悩んだ結果、書き順を無視して右下の部分から書き始め、次に左下、最後に上の横棒…と普通ならしない書き方をした。
「す、すごい書き順…」
「でもほら!意外と5歳でもかけるのよ!」
「いや、でも…」
「葵ちゃんすごいね!なんで書けるの?」
一度27年生きたからだよ。知ってたの?と顔を覗き込むコナンに心の中で呟きながら続ける。
『見たもん!覚えてるよ』
「見たってあの写真?」
「いや、あの写真を覚えて書いたならここの線は繋がってないとおかしい。まぁでも彼女がこの字を初めて書いたのは間違いないみたいだ」
「え、どうして?」
「形は歪だし書き順もすごかっただろ?ボクには彼女が字の形を再現してるだけに見えた」
「ボクにもそう見えたよ。まるで目の前にお手本があるみたいに書いてた」
この二人よく見てるなぁ。写真を見たで納得してくれないかななんて思ってたけど無理そうだ。作戦Bに移行しよう。
『テレビで見たんだよ!』
「それだけで書けるものなの?」
「さあ」
首を傾げる蘭と園子を他所に、すでに掴んできたらしい探偵たちは顔を見合わせて、コナンがおずおずと口を開いた。
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