第3章 すたーと
日用品と少しの服を買い、現在午後19時半過ぎ。二人はとある高級マンションの部屋の前にいた。
「はい、どうぞ」
鍵を開けた安室に促されゆっくりと玄関に足をつける、綺麗すぎて緊張で少しだけ足が震えた。
「ただいま」
『ぉ、お邪魔します』
「違うでしょう?此処はもう葵ちゃんのおうちなんだから」
はいやり直し!と目線を合わせて笑う安室に、胸の辺りがポカポカと温かくなる。
『ただいま!透くんおかえり!』
「ふふ、ただいま。おかえり葵ちゃん。さぁ中に入ろう」
『うん!』
靴を脱ぎリビングに入りながらサッと間取りの確認をする。これは癖というか職業病だ。
一人暮らしには広すぎる2LDKの室内に物はあまりなく、家具は白でまとめられ清潔感が漂っている。奥にある2つの扉のどちらかが寝室だろう。
『わぁ〜広ーい!』
「僕はご飯作るけど葵ちゃんはテレビでも観るかい?」
二人揃って洗面台で手洗いうがいを済ませ、葵をソファに座らせテレビを付け買ったものの整理、と忙しそうに動いている彼を横目に、顔をテレビに向けながらぼんやりとこれからを思う。
「葵ちゃん、なにか食べたいものはある?」
『ん~オムライスが食べたい!』
わかったとエプロンを着けた安室がペニンシュラ型のキッチンで手を洗う。そういえば、彼は主人公と知り合ってから毛利探偵の下の喫茶店でバイトを始める…と友人が話していたのを思い出す。
現在すでに喫茶店で働いているのだろうか?それともまだ主人公…江戸川コナン君と出会っていないのだろうか。
まぁ、それを知ったところで話しの道筋なんて知らないのだから関係ないけれど、こんなことになるのならもう少しちゃんと聞けばよかったと後悔しつつ、とりあえず安室の仕事を聞こうと口を開いた。
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