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【名探偵コナン】幼女になりました。

第9章 兄と親バカと花見


注がれた赤ワインをゆっくり傾け、滑らかな渋味で舌を湿らせる。一つ溜息を吐いて眼下に広がる東都の夜景を感情なく見下ろしていると、ソファの前に置かれた小さい丸テーブルの上で携帯が震えた。

送られたのは画像。送り主はバーボン。
件名はなく、本文にも一文のみ。しかし、それを断る術を今の彼女は有していなかった。

《先日の件、協力してくれますよね?》

そんな言葉と共に画面に表示されているのは、ベルモットが送ったレースがふんだんに使われている真っ白なワンピースを身に纏った少女が恥ずかしげ頬を染めている姿だった。

2枚目には全身が写されており、紺色のヒールの低い丸みを帯びたメリージェーンを履いた葵が、ワンピースの裾を摘まんで笑っている。

有無を言わさない文に敵意剥き出しにしていた心が見事にひっくり返るのを自覚しつつも、そんな些細な事などどうでもいいと意識を画面の中の天使に向けた。

母のような、姉のような、信者のような、そんな気持ちを抱えながら愛しそうに子供の頭に指を這わせた彼女の元に新たに2枚の画像が送られた。

腰元で唐茶色の大きなリボンを結び、クリーム色のワンピースにこれまた唐茶色のベレー帽を被る少女はベッドであろう場所に座りその真白を此方に向けている。少し傾けられた耳元で揺れる二連の銀杏は綺麗な狐色で、この銀杏に色合いが合わせられているのが分かる。

2枚目はやはり全身が納められていた。
白い壁を背に立つ少女の足元は山吹色のリボンストラップシューズで走り回れるようになっている。

全体的に綺麗に纏められているが、そこまでフォーマルという訳でもない。

「意外と良い仕事するのね」

いつも腹の探り合いをしている男の新たな有能ぶりと、この笑顔を直に向けられていることへの嫉妬に鳴りを潜めていた苛々が再燃するのを感じ、保存した4枚の画像を厳重に鍵の掛けられたフォルダに仕舞い、少し温くなったワインを流し込んだ。



《いいわ。但し、この賄賂が通用するのは今回限りよ》




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