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【名探偵コナン】幼女になりました。

第9章 兄と親バカと花見


自分があの子に出来ることは何だろうと思考を巡らせて何通りもの路を歩いてみても行き着く最後はどれも同じで、ははっと乾いた笑いが零れる口元を覆った。
彼女が必死に考えた生き方は改めなければならない、けれど否定だけはしてはいけない。こういった子供の繊細さを理解しているからこその難問に、この時ばかりは立派な娘を育て上げた小五郎に親としての知恵を借してほしいと本気で思った。

「今すぐ変える必要はないんじゃない?」

徐々に暗くなる外を学生達が楽しそうに歩き、仕事帰りのサラリーマンやOLが疲れたように家路を急いでいる。
そんな風景を見ていたコナンがぽつりと落とした言葉は思いの外店内に響いた。視線を移した安室が旋毛に目を止めると、くるっと振り返ったその瞳が不敵に細められた。

「怖がる必要なんてないんだって、これから皆で教えてあげればいいだけでしょ?」

どうだと言いたげに胸を張ったコナンに虚をつかれた安室の顔はさぞかし間抜けだったことだろう。葵の保護者は自分なのだからと一人で歩ける路しか見ていなかった大人に、子供は親だけが育てるものではないと大通りを示したのは僅か7歳の探偵で。

その通りだと納得すると同時にそんな事にも気付かなかった自分に腹を抱えた。ぽかんとする頭を謝罪を込めて撫でると、更に首を傾げる姿にまた吹き出した。
一頻り笑った後、はあぁと一度盛大に息を吐いた安室は滲んだ涙を指で拭うと訝しげに此方を見るコナンに向き直り頬を緩めた。

「バッジ、お願いできるかな?」
「えっ!」
「発信器は困るけどね」
「スイッチ式に出来るって言ってたから多分大丈夫だと思うよ!」

パッと顔を綻ばせたコナンは何度か頷くと"博士に報告する"と席を立った。レジの前で自分を呼ぶ彼に座ったままお代はいらないと告げれば、渋りながらも礼を言って扉へ向かう後ろ姿にそうだと声を掛けた。

「教えてくれてありがとう、コナンくん」
「どういたしまして。葵には秘密だよ?」
「わかってるよ。…あの子に色々教えてあげてね」
「…安室さんが葵を大事にしてることはわかったから、任せてよ」

そう言って駆け出した不思議な程頼れる小さな背中を見送る。

「完璧にお兄ちゃんだな」





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