第8章 決意
誰が見ても泣き腫らしたと容易に分かる程赤くなった目を恥ずかしさで泳がせる。いつの間に犯人を縛り上げたのか全員がトラックから降りていて、にっこりと年下を見守るように見つめる探偵団の視線を受け徐々に下がっていった目線は遂に足元から動かなくなってしまった。
「ごめんね皆。怖くなかったかい?」
「全然!」
「兄ちゃんが倒してくれたからな!」
「あのレシートの暗号を見て来てくれたんですよね?」
「レシート?あぁ…猫の首輪についてた妙なレシートなら風に飛ばされて見つけられなかったよ」
「なんだ~」
「じゃあさ、探偵さんも博士の家でケーキ食べる?」
興奮気味に話す探偵団の後ろでフードを被った灰原が警戒と安堵、心配を滲ませた表情で葵を見つめていたことなど知りもせずに蹲りたい衝動を抑えていると、離れる口実として最適な単語が出たことでそれに飛びついた。
『ケーキ!わたし昴さんの所からケーキ取ってくる!』
「あっおい!」
「待ってわたしも!」
「歩美ちゃんそっとしておきましょう。泣いてしまって恥ずかしかったんですよ!」
『(その通りだけど!お願いだから抉らないで!)』
短い脚ではどうしても距離が離れるまでに時間が掛かる為、後ろから微笑ましいと話す声がして顔が熱くなる。それを慌てたコナンが遮るのを聞きながら僅かに開いていた門を抜けるが、届かないインターホンに唸ると仕方なく沖矢昴の文字をタップしようと携帯の在処を思い出し、ああそうだと落胆して強めに扉を叩いた。
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