第8章 決意
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一時はどうなるかと思ったが、何とかなったかとコナンは深く息を吐いた。
組織の一員であるバーボン、安室透には何らかの不備でレシートが渡らなかった。或いは渡ったが助ける価値もないと判断されたかだと思っていた。
まさか、まさか此処で来るなんて予想すらしていなかったのだ。取り敢えず灰原を目につかない所に隠し、自身も隣に控えた。
ふと安室を保護者に持つ子供に視線を移すと恐怖からか目を閉じ扉を押しては離し、また押しては離しを繰り返している。
早く自分が安心できる人の所へ行きたいのだろう。だが、男が扉を押さえている手を離した後が危険だと彼女の肩を掴もうと足を動かしたとき、安室が勢いよく放った左手が男の鳩尾に決まった。意識を刈り取られ凭れ掛かった男を地面に落とし、もう一人を視界に入れた安室がにっこりと恐ろしい程完璧な笑みを浮かべたのを見てコナンの頬が引き攣った。
"あなたもやります?"と言いながらシャドーボクシングの様に拳を突き出す安室に腰を抜かした犯人はそのまま恐怖から気を失った。
まぁ世界規模で活動している犯罪組織の幹部からの威圧だ。気を失いたくなる気持ちもわからなくもない、と車からガムテープを手に戻ってくる安室を視界に入れ、何か忘れていると思った所でバンッと勢いよく扉が開き葵が外へと投げ出された。
「っ!葵ちゃ」
「灰原!」
しまった!と思うも咄嗟に葵を助けようと動く灰原を押さえ込む方を優先した。今彼女をバーボンの前に出すわけにはいかない。
「(ごめん、葵)」
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