第2章 女神の軌跡(2)Gian side
本来ならありえないことだが情報のすれ違いにより、途中はぐれてしまったベルナルドと合流しようと緊急時に決められた場所で、ヤツラは待ちかまえていた。
俺を痛めつけて報酬を貰いそして……殺す為に。
隙を見て逃げようにも、こんなときに限ってラッキーは転がってきちゃくれない。
人数が多すぎて反撃することもままならない、完全にお手上げ状態。
体を動かすことも出来なくなり、死を隣に感じた瞬間……首から下げていた筈のリングが地面の上を転がり、助けに来てくれたベルナルドの声が聞こえた。
情けないことに俺はそこで意識を失ってしまったワケだが、治療中ベルナルドが難しい顔をしながら教えてくれた。
いわくーージャンと同じ髪と目の色をした女が教えてくれたーーらしい。それもとびっきりの美人。
……そンなん、アイツしかいねえじゃん。
動けるようになってすぐ家に向かった。彼女が待ってくれているかはわからない。
お得意の賭け事。
息がきれて呼吸が苦しいくらい走り続け、たどり着いた建物の扉を開けた先に彼女は……トゥーナはいた。
ひとつしかないベッドの上で横になって丸まり、静かな寝息を立てている。
そういえば、と思い出す。
昔からトゥーナは力を使いすぎると眠る傾向にある。失った力を回復するためだとかなんとか言っていた。
多分…あくまで予測だが……彼女は俺を探し守り助けようと、自分のもつ力をかなり消耗してしまったんじゃないだろうか。
…ばかじゃね……本当にバカだ……俺も、トゥーナも…。
目が覚めたトゥーナは俺の無事をひとしきり確認すると、激しい怒りを湛えた眼差しをこちらに向けた。
「ジャンってバカなの?死にたいの?なにしてんの?そんなに死にたいなら、今すぐわたしが死なせてあげましょうか」
そう言ったトゥーナの頬を涙が静かに濡らした。
驚いて動揺し、言葉の出ない俺と。それ以上、声を発することなく静かに涙をこぼす彼女。
俺はぎこちなく手を伸ばし親指で撫でるように、トゥーナの目元に光る水滴を拭いとってなめた。
……あまくない。ちょっとしょっぱい……でも悪くねぇかも。意外とイケる味。