第2章 女神の軌跡(2)Gian side
少しの躊躇いを見せてから大胆に肩まで開いた、シンプルすぎる白いワンピースの裾を揺らしながら、トゥーナが俺に近づいてくる。
『……ジャン、ごめんね。この姿のときに人前で話せないのはわかってるんだけど、やっぱり寂しいって言うかつまんないって言うか…拗ねました、ごめん』
そっと右頬に触れてきた白く細い手にニヤッと口端を上げれば小さく笑われ、左の頬にやわらかな唇がおりてきた。
チュッ…。
軽いリップ音がして、触れたと思えばすぐに離れていくソレに少しのモノ足りなさを感じるが、まァ、それもいつものこと。
たまには、もーちょい大人のキスでもよろしくてよ。
俺だって男だし?ここ女っ気のない刑務所だし?トゥーナってば見た目は極上のオンナだし?
これで、まったく盛るなというのがムリな話ってもので。
実際、性に目覚めはじめてからはトゥーナと過ごす毎日がツラくて仕方なかった。
人が必死こいて襲わないようにと気を張っているのに、彼女ときたら家だろうが外だろうが朝だろうが夜だろうが、かまうことなく抱きつくわ触るわキスしてくるわ。
夏なんて実体化したまま薄着でフラフラするのは当たり前で、ベッドに躊躇なく入ってきては抱きついて添い寝をするし、挙げ句の果てには風呂嫌いな俺をキレイにしてあげると言い一緒に入ろうとする始末。
さすがにブチ切れて、それからはトゥーナを放置して外に出まくった。家に帰らない日も多かった。
初めて女の体を味わって溺れた。サルかってくらいヤりまくった。
バカなことばかりやって悪いこともたくさんした……それは今もだケド。
――…あれは俺が十六歳で、まだCR:5に入りたての頃。
◇ ◇ ◇
相棒として当時、幹部候補だったベルナルドと共に仕事をしたときのこと。
簡潔に言えばハメられた。俺のことを気に入らないと思った、誰かに。