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Fortuna【ラッキードッグ1】

第7章 女神の軌跡(6)


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「あァー…マジ焦った!」

「遅いから心配したよー、間に合ってよかったね」


イヴァンとの話が済んだわたしは、疲労感でへろへろになりながら実体化を解いて囚人服を隠すとジャンをひたすら待っていた。

そんな彼が自分の独房へ戻ってきたのは、就寝時刻ギリギリの時間すべりこみセーフだった。


「うっかり考えこんじまって、さ」

「なに、計画について?それとも他に気になることがあるの?」


並んでベッドに腰掛けながら、お疲れさま〜とジャンの頭をヨシヨシと撫でる。


「…計画成功と裏切りの可能性について、ちょっとな」

「…なにかあったの?」


問いかければジャンは、頭を撫でたわたしの右手を取って自分の頬に当てぽつりぽつり…静かに話し出した。


「ルキーノは俺を観察してる…脱獄最優先な今はいいけど、その後の判断如何によっては切り捨てられる可能性は高い…情報屋にも俺のこと訊いてたみたいだしな」


掴んでいるわたしの手にジャンがスリスリと頬擦りをしてきて、少しくすぐったい。
…猫のマーキングみたい、かわいい。


「用心深く合理的、幹部の手本を見せられた気分だ…」


そう言って、頬擦りしたわたしの手のひらに口付ける。
ひとつ、ふたつ…キスは指先へと向かっていき。


「オマケに、女ならすれ違うだけで惚れちまうかもっつー二枚目ときた」


指の腹をペロッとなめられ、先端を口に含まれた。
……What's?


「…じゃ、ジャン?」

「ん?」

「なに、してるのかな?」

「……ばーきんう゛?」


指先を口に含んだまま答え、あむあむと甘噛みしてくる。


「いやいや、なに言ってるのか全然わからないから。とりあえず噛むのやめようか!」


なんで舐めるの?噛むの?
犬か!赤ちゃんか!……あ、ラッキードッグだった。


「わんわん…」


何気なく口にした単語に嫌な記憶が甦り、ググッと眉根が寄ってしまう。


「っちゅ…わんわんが、どうかしたのけ?ここ、シワ寄ってんぞ」


音を立てて甘噛みをやめたジャンが、わたしの眉間を自分の指の腹でグリグリと押して顔を近づけてきた。
恋人同士がキスをするような距離だが、ジャンとわたしが近すぎるのはいつものことなので最早気にもならない。
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