第6章 女神の軌跡(5)
「それじゃあ戻るから、ジャンの件よろしくね」
座っていたベッドから立ち上がり背を向けたら。
「ファック、わかってる………お前、そんなに興味あるんだったらジャンに頼めばいいだろ」
なんだか気になる内容に、未だ顔を背けたままのイヴァンを振り返った。
「なにを頼むの?」
「それは……アレ、だ…男同士のっ……Fack!言わせんな、Shit!」
「あ、男のケツ掘るってやつ?」
「気持ち悪ぃことハッキリ言うんじゃねえ!」
さっきイヴァンが自分で言った台詞なんですけど。
怒鳴りながらこちらを見たイヴァンに、ジト目を送るがまるで気にされない。
「というかさ、なんでジャンが出てくるの」
「…どうせ飽きるほどヤってんだろ、たまには趣向が変わってアイツも喜ぶんじゃねぇのか」
うっわぁお、凄く下世話なことを物凄くゲスイ顔で言われた。
「誤解してるみたいだけど、ジャンとはそんな爛れた関係じゃないから。必要時にキスしてもイヴァンみたいに舌ツッコんだりしないから」
先ほどの行為に対する嫌みを込めて言ってやる。
だいたい、ジャンとは口にキスしたのだって今日が初めてだし。
それだって、あのこにとってはなんでもないことみたいだし……親愛ぐらいはあって欲しいけど。
「は!?……それ、マジで言ってんのか」
「大真面目ですけど……なんでそんなに驚くの」
「いや、トゥーナお前……もしかして初めて、とか言わねーよな…?」
今まで考えもしなかったイヴァンの問いかけに、心の中で首を傾げる。
そういえば…人間のときは記憶がぼんやりとしてわからないけど、女神として目覚めてからは…。
「うん、初めてだよ」
この体では経験したことない。
「ばっ…な、んでソレを黙ってんだ!?」
「むしろ、どうしてわざわざ『わたしは処女です』って公言しないといけないワケ?」
完全なる羞恥プレイだ、わたしはそんな変態的な趣味嗜好もってない。
何が言いたいのか、まるで意味がわからない。
心の中だけでなく実際に首を傾げてその疑問を体現して見せると、イヴァンは苛立ったように頭をガシガシ掻いた。
「……る…った…」
「……え?」
「……るか……!」
なにか言っているみたいだけど、声が小さすぎて断片的にしか聞き取ることができない。