第6章 女神の軌跡(5)
「ごめんっ、もうしないっ、煽るようなことしないから…!」
そう言ってもイヴァンはなにも答えず、首元に軽く噛みついてきて体がビクッと震えた。
肌を撫でていただけの手がしっかりと胸を捉えて、やわやわと揉みはじめる。
ひぃいいい!やばいやばいジャンの前にわたしが喰われる!!
「待って、ちょっと落ちつこう!?」
「うるせぇ、もう落ちつけるかよっ…」
「だってイヴァン、わかってる?相手わたしだよっ」
「トゥーナだろ、問題ねぇ」
おお、イヴァンに名前呼ばれるの何気に初めてじゃない?
…て違うっ、えーとええーと…あ、実体化をとけば…駄目だ、さっきのキスで触れるようになっちゃった!
他に何か………そうだ、これなら…!
わたしは焦る意識をなんとか集中させ、体を男性化させる。はたしてイヴァンの動きは…間も無く止まった。
不機嫌そうな表情を隠しもせず鋭い目付きでわたしを見下ろす。
「……なんで男になってんだよ」
「……そんな気分になったから」
「ファック、女に戻れ」
「えー、このまま相手してくれないの?」
内心、しめた!と思いながら左手でイヴァンの頬をわざとらしく撫でる。
「男のケツ掘る趣味はねぇんだよ!」
「ケツ掘るとか、イヴァンくんお下品ですわよ」
「Fack!………萎えた、クソ」
イヴァンはそう吐き捨てるように言うとわたしの上から退いてベッドに座り直し、膝に肘をつき手に顎をのせる形でそっぽを向いた。
その姿がどこか小さい子が拗ねている様子にも重なり、思惑どおりの展開も相まってニヤニヤが抑えきれない。
「いやぁ、残念だなー。男同士の乱れた快楽に興味あったのになー」
「黙れ、キモいこと口に出すんじゃねえ、シット」
乱れた服を整えながらふと浮かんだ疑問について考える。
これほど同性愛を毛嫌いしているのに、何がどうなって関係をもってしまうのだろう……愛?愛なのか。
本当にそうなら、ジャンをイヴァンたちに任せてやらなくもない。
ジャンが良いなら男同士だろうが受けだろうが攻めだろうがアブノーマル嗜好だろうが、大体のことは応援しよう。うん。
今のところは、まだまだだね…な感じだけど。
……ちょいちょい蘇ってくるネタ記憶はなんなんだろう…。