第1章 女神の軌跡(1)
「わたしを誰だと思ってるの?大丈夫に決まってるでしょ」
「……っ…く………ハハ…!……フォルトゥーナ様だった。俺のラッキーの源、俺だけの女神」
偉そうに見上げてやれば、心底おかしそうにジャンは笑う。
そうしてわざとらしく、毎回同じセリフを繰り返し言うのだ。
小馬鹿にされたように感じてムッとした表情をして見せれば、今度は優しい笑みを浮かべてギュウッと抱きしめている腕に力を入れてくる。
「俺のトゥーナ」
「うん」
「…俺だけのもの」
「…うん。わたしはジャンだけのものだよ」
何かの確認作業のように、ジャンはこのやり取りを数年前からずっと続けている。
聞いてくるジャンの声音が微かに不安を含んでいるから、わたしは応えることをやめない。
けどせめて、何が不安なのか原因がわかればなぁ…なんて最近は思っている。
やっぱりジャンには、いつも楽しく笑ったり素直に怒ったりしてほしいしね。
そんな感じで日々をのらりくらりと過ごしながら、ジャン再逮捕となるまで残り1日だったり。
ジャンのばかぁああーー!!!!
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