第1章 女神の軌跡(1)
刑務所に入ったら脱獄計画を考えてしまうのがクセになってるとか……ジャンの思考回路どうなってるの。
死にそうな目に合ったこともあるのに。
……ラッキーの無駄遣いはやめてほしい。切実に。
「アレ?おーい、トゥーナさーん。反応してくんねーの?べっつにイイけどさー…」
「…っ………ねぇ、ジャン」
「なーに?今チョーット忙しいんだけどぉ」
うん。わかってる。
でも、あえて言わせてくれないかな。
きみが服の中に手を突っ込んで掴んでるの、わたしの自慢の胸だからね。
「ちょっとジャン、胸揉むのやめ…ひょあっ、ブラ外さないで!」
「だーって、暇だったんだもん。ハニーは相手してくんねえしさ」
そう言いながらニンマリ悪戯が成功した子供のように笑うジャンを見ると、怒る気も無くなりつい許してしまう。
たとえ胸を揉まれブラジャーを外されて、また元に戻されるというセクハラ行為をされたとしても。
それはきっと、ジャンがわたしにとって特別だから。
ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテ。
強運の持ち主。『ラッキードッグ』が彼の二つ名。
おまけに、いいのか悪いのか…わたしという意志を持った幸運の女神・フォルトゥーナに愛されちゃった男。
今さら他の人間に渡したくないし簡単に渡す気もないしなぁ。
ご愁傷様です。
でもまぁ、女遊びは許してるし自由も尊重してるし、それに……
「安心してね」
「なにが?」
「ジャンはわたしが守るから。ずっと、ずーっとね」
「……いきなりなんデスカ、トゥーナさん。熱でも出たのけ?」
「ふふっ、なんでもありませーん。それに、いつも言ってることじゃない」
ジャンの腕の中でクルッと半回転して抱きつけば、頭の上に軽く顎をのせられた。
「それもそっか。つーか、おまえはまず自分を守れって。ほれ、隙だらけですわよん」
頭に声が響く、響く。
大人になってすっかり低くなった大好きな声。
くすぐったくてクスクス笑いながら、胸元に頭をうりうり擦りつける。