第6章 女神の軌跡(5)
でも、言っておきたいことあるしなー…牽制もかねてお願いしておきたいしなー、ナー、なぁー…。
そんな感じでうだうだしてたら、すぐイヴァンに発見された。
睨みはしてこないけど、すんごい怪訝そうな表情。
「…お前、ンなとこで何してんだ。ジャンと一緒だったんじゃねぇのか?」
「ジャンとは別に用事というか…イヴァンに話がありまして」
「ジャンの前では話せねー内容ってことか」
「………」
なにこのこ、意外と鋭いんですけど。
ジャンは多分おバカさんだと思ってるけど、いやわたしも思ってるけど…頭の回転は悪くないというかむしろ良いみたい。
さすがは最年少幹部様々ってトコですか。
「そこじゃ悪目立ちすぎんだろ、中に入れ」
顎でクイッと中を示すイヴァン。
これは噂の顎クイ……や、なんかわたしの知ってる顎クイと違う。
トキメキとは真逆の位置に存在するものだ。
「クソ、早くしろ!」
「ハーイ、おじゃましまーす」
ほんと気ぃ短すぎない?カルシウム摂取した方がいいよ。
今度プレゼントしてあげよう……食べて美味しい小魚って売ってるかな。
中に入るとイヴァンはベッドへ腰かけたので、ひとまずその前に立ってみた。
「話なんだけど…」
「ファック。上から見下ろすんじゃねぇ」
なんて理不尽。
「じゃあ、そこのイス借り…」
「今、使用中だ」
「え、でも何も乗ってな」
「残念だったな」
あからさまに見えすいた嘘を口にして、イヴァンが嘲笑う。
うーわ、イラっときたぁ…。
ルキーノを見習え、警戒しながらも一応最低限の女性扱いしてくれましたよ……って、いま男だった。
ルキーノ、元が女ならいいのかな守備範囲広いね凄い。
「なに黙って突っ立ってんだ。早く話せ、寝るぞ」
立つのは駄目イスも借りれない…つまりコンクリートの上に直に座って見上げてろってことですか。
うん、フザけるのは楽しいジャンだけにしとけ。
「ごめんなさぁい。おとなり失礼しまぁす」
どこぞの店のネーチャンよろしく、目一杯かわいこぶった声を出しながら――今は男だけど――イヴァンのすぐ横に腰かけてやる。