第6章 女神の軌跡(5)
恥ずかしそうに目を逸らして額に手を当てるジャンに、口許がニマァっといやらしく笑ってしまう。
「やだなぁ、今さら遠慮しなくていいのにー。わたしとジャンの仲じゃない」
「…ふぅン…俺とトゥーナの仲、ね……」
もっと可愛い反応が見たくて顔を覗き込んだら、逸らされていた目がこちらをジッと見てきた。
残念ながらすでに恥じらう様子は欠片もなく、気だるげに細められた目の金色が意味ありげに輝いている…ような気がする。
……何か、企んでます?
「じゃあ遠慮なくぅー。今夜はトゥーナに甘えよっかなー」
「はいはい。今からでも寝る前でもいつでもどうぞ。もし眠れないって言うなら、一晩中かわいがってあげる」
「いやん、トゥーナさんったら男前なんだからぁ。惚れちゃうだろ」
なんだ、いつものジャンだった。
よく考えれば馬鹿みたいに思える警戒をすぐに解くと、ジャンの背中を促すようにポンと軽く叩いて。
二人クスクス笑いながら、また並んで歩きだす。
「そういえばコレ、どこに向かってるの?」
「今さらですわね。情報屋…クレイジー・ハーミットのトコ」
「ええー……あの人、嫌な感じするから好きじゃない」
「先、戻っとくか?」
うーん……ジャンを1人にはしたくない…けど、あそこには行きたくないし……ああァぁあ。
「どうしよう?」
「俺に聞くのけ?」
「他に誰に聞けばいいの」
「誰だろネ。んじゃ、先戻っとけよ。行ってくっから」
通路の途中に見えた階段に立ち止まり、ジャンが下の方をチョイっと指で差す。
わたしは下に降りる階段を見て、あの情報屋のなんともいえない不気味な姿を思い出した。
……夜に会うのは控えたいビジュアルだよね。
「でも…1人で大丈夫?」
「いつものことさ。ヘーキ、へーき」
「……わかった。なら顔かして」
「なんのお呼びだしかしらん?」
「ロイドみたいにおホモだちな夜のお誘いじゃないことは確かです」
「そりゃ安心だ」
「ほら、じっとして」
ふざけてちっとも大人しくしてくれないジャンの顎を、軽く掴んで固定する。