第1章 女神の軌跡(1)
身長はジャンよりは低いけれど女性にしては高く、スラリと伸びた長い手足に小さな頭。
華奢な体躯のわりに大きくて張りのある胸と、キュッと上向きでつい触りたくなるようなお尻。
そして本当に信じられないことに、ウエストは細くくびれを作り引き締まっている。
理想的にもほどがある。
今なら確実に八頭身だよ。
ゲームの世界だかパラレルワールドだか幸運の女神・フォルトゥーナだか知らないけれど、第2の人生も悪くないもんだ。
……あ、人じゃないから神生?
「なーに鏡の前でニヤけてんの?もしかして自分に見惚れてたとか。イヤン、トゥーナったらいつからナルシストになっちゃったのかしらん」
そんなことを言いながら背後から抱きしめてくるのは、元・金髪美少年。
現在、立派な美青年に成長した25歳のジャンである。
こんな風に成長するまでの間、それはもう語り尽くせないほど色々なことがあった。
まずは幼いジャンの警戒心をとくことから全ては始まり……。
トゥーナという名前をつけてもらったり。
実体化して一緒に遊んだり、外見年齢をジャンに合わせてみたり。
とあるクリスマスに、違うタイプの美少年と仲良くなってつい浮かれてサービスしてみたり。
悪さばかりしようとするジャンを止めたり、怒られてから慰めたり。
孤児院を出て行くジャンに強制的に道連れにされたり。
少し大きくなってバカやったりばかやったり馬鹿やったりするのを、コッソリ密かに見守ったり。
悪そうな人たちと知り合い痛い目見たジャンの代わりに、お礼参りな3倍返しをしてやったり。
ジャンが思春期や反抗期に突入したときには、家にもロクに帰ってこないしそっけないし冷たいし、わたしの存在ガン無視だし…もう知るかあんなクソガキ!とか思ったりもした。
そしていつの間にか童貞クンを卒業していて、綺麗なオネーサマ方への口説き文句なんかをサラッと言えるようになっていることに驚いたり。
さらにいつの間にかCR:5とかいうマフィアの構成員になって命の危機に陥っているのを助けて疲れたり、あまりに知らないことだらけで拗ねたら宥められ甘やかされて立場逆転!?なんてことになったり。
そして初めての刑務所暮らしに初めての脱獄…そう、まさかの脱獄。今ではもう四回も経験済みのお手伝い済みときたよ!すっかりベテラン勢だよ!