第5章 ×3章の後半ボツ話×
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「噛んでいいぜ」
「いやいや、噛まないからね」
「俺は噛んだのに?」
「だから、それ、なんで噛んだのかさっき聞いたんですけど」
「あー…マーキング?俺ってLUCKY DOGだし、わんわん」
「マーキングって、なにソレ…」
棒読みで「わんわん」とか鳴かれても可愛くない。
かわいくなんか……嘘です。
本当は可愛いと思いました、胸きゅんしました。重症だ。
噛まれた手で胸を押さえていると再びその手を取られ、ジャンが噛み痕をまじまじと眺める。
「ワオ、すっげー痕ついてるわー」
「ジャンがつけたんでしょうが」
「ん、ごめんね。痛くして」
ジャンが甘えた声を出して抱きしめてくる。
わたしの髪に頬をすり寄せ、頭のてっぺんにキスを。
…こんな風にされると弱いんだよね。
もう必要じゃないとばかりに離れていった時期があるから余計に、戻ってわたしを見てくれたのが求めてくれたのが嬉しくて。
それ以来ジャンには基本コンデンスミルクをかけたチョコレートのように、どろっどろにしつこいほど甘い。
何故か最近はジャンの方からも甘えてくるようになったから、かわいくて仕方なくて。
「いいよ、ジャン。もう痛いことしないでね」
「痛くなけりゃいいの?」
「なにする気ですか」
「それは、まァ、いろいろ」
ちっとも懲りてない発言に呆れながらも、ジャンの背中に腕をまわして。
「…なんでもいいけど、変なことはヤメてね」
「りょーかい」
「……ジャン」
「ンー…かたいネ」
「男の尻ですからね!」
男性化しているわたしのお尻をわし掴み、感触を確かめるように揉んだジャンのお尻をペシッと叩けば。
ジャンは笑いながら軽く謝って離れ、わたしの髪をワシャワシャ両手でかき回すと大きく頷いた。
「ヨシ。ここで実体化するときは絶対、顔隠しとけよ。髪もキレイにしちゃダメ、よろしくて?」
「はーい」
「ンじゃー、戻るか」
「うん。脱獄のこと、後で説明してね」
さすがにくっついていると目立つ為、わたしは先に足を踏み出したジャンの後を追うように歩きはじめる。
これでまだ、はじまりのハジマリだなんて。
この先が不安です。