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Fortuna【ラッキードッグ1】

第5章 ×3章の後半ボツ話×


「えーと…ジュリオ?そんな気にしなくていいから、これからよろしくね」

「はい…よろしく、お願いします。……じゃあ、俺はこれで」


ジャンそしてわたしを順に見て、また律儀に頭を下げてから立ち去るジュリオの背中に手を振った。
その姿が完全に視界から消えた途端ジャンは地面にしゃがみ込み、自分の頭をグシャッと掻いて大きく息を吐き出した。


「……なんとか乗りきった」

「えっと…本当にごめんね?ジャン。お疲れさま」

「言葉だけじゃ癒されねえ……甘いモンがほしい」


こちらをチラッと見上げてくるジャン。
上目遣いはやめてほしい…可愛いから何でもしてあげたくなってしまう。


「後でなにか探してくるから、もう少し我慢してくれる?」


自分でも甘いと思いつつジャンの頭を撫でれば、手首を掴まれる。
ゆっくり引き寄せたわたしの手にジャンは自分の唇を押し当てて…。


「あむ」

「っ!!」


…甘噛みした。

びっくりして固まっていると、ジャンはすぐに噛むのをやめた。
わたしと目を合わせて、離してくれるのかと思えばそうではなく。
開けた口から大げさに舌を突き出して、まるでわたしに見せつけるように。
噛んだところをねっとりなめ上げた。

……無駄にエロい。

現実逃避なのかなんなのかまっさきに頭に浮かんだのは、ジャンの行動に対する思いではなく。
客観的に見たジャンの仕草へのズレた感想だった。

黙ったまま何も反応しない…反応できないでいると、ジャンは目を合わせたまま今度は歯を立てて噛んできた。


「いっだあ!!」


反射的に掴まれた手を振り払い確認すると、血が滲んだりはしていないもののクッキリと歯形がつき内出血していた。
女神になってからケガとは無縁の生活を送っていたから、なおさらズキズキと痛く感じてしまう。


「…なんで噛んだの?ジャン」

「痛かった?」

「なんの確認!?わからないならジャンも噛んであげましょうか?」


苛立ち混じりにそう言ってやれば、おもむろに立ち上がったジャンはわたしの口元に手を差し出して。


「どーぞ」

「え」


意味がわからずジャンの顔を見て、目の前にある手を見て、もう一度顔に視線を戻す。
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