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Fortuna【ラッキードッグ1】

第5章 ×3章の後半ボツ話×


「じゃあ、ひとまずこの話は終わりにしよう。トゥーナ、ジャンの手助けを頼む」


それなら任されてもいい。
一度頷いて見せれば、ベルナルドは金網の向こう側…わたしがさっき通った道へと向かって歩いて行く。


「またな可愛いブロンドちゃん。今度はその髪、思う存分触らせてもらうぜ」


ルキーノの言葉に首を横に振るも、彼は口端にわずかな笑みをのせてベルナルドの後に続く。


「ジャン。そいつ、ちゃんと躾しとけ」

「躾しなくてもイイコですわよ?」

「むしろ、わたしがジャンに躾する側なんですけど」

「うっせえ、どこがだ!いいからちゃんとしとけっ、ファック!」


キャンキャンうるさく吠えてから、イヴァンも歩き出す。
全員先に出ていくのだろうと思って、まだ名前がわからない美人さんがこちらへ近づいてくるのをジャンに隠れながら眺める。


「…ジャンさん、あの……その人、の名前……本当に…トゥーナって言うんですか…?」

「そうだけど、どした?」


まさか美人さんがわたしの名前について聞いてくるとは思わなかった。
さきほどまでの彼の発言や殺気を思い出して、答えるジャンを静かに見守る。


「いえ。……他に、トゥーナと呼ばれる人がいる、とかーー」

「いんや、俺がトゥーナって呼ぶのはコイツだけよ」

「……そうですか。ありがとうございます」


いったい何を確かめたかったのか、それなりに納得したらしい美人さんはジャンに軽く頭を下げて。
ついでわたしに視線を移すと、何故か急にそれまでの態度を一変させて右手を差し出してきた。


「…ジュリオ・ディ・ボンドーネです」

「…トゥーナです」


少し迷ってジャンを見ると頷いてくれたのでおそるおそる手を握ってみたら、予想外に優しく握り返されてびっくりする。

名前はジュリオか……ンン?なんか、どこかで聞いたことあるような。
……気のせい、かな。


「……トゥーナさん……さっきは失礼な態度、すみませんでした…」


手が離れると少し頭を下げてジュリオが謝ってきた。
俯き加減の顔が、さっきまでの冷たい無表情とは違ってしょんぼりして見える。

な、なんか……頭撫でたくなってきた。
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