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Fortuna【ラッキードッグ1】

第5章 ×3章の後半ボツ話×


「俺が今まで一人でムショから抜け出してきたって本気で思ってるのか?連続して四回も」


ジャンが真剣さを瞳の奥に隠しながら、からかうように挑発するように言葉を続ける。

…イヤ、きみ楽しんで脱獄してましたよね。
そりゃあ頼まれたことをお手伝いくらいはしたけどさ。
考えたのも実行したのもジャン自身だし…ソコにわたしはほんの少し幸運をのせただけ。


「今回の脱獄に関してもそうだ……ソイツなしに成功は100%ありえない」


100%は言い過ぎだと思うけれど、そこまで言わなければこの幹部連中はわたしの存在を欠片も認めはしないのだろう。
現に今、彼らのわたしを見る目がわずかに変わった気がする。

ラッキードッグにここまで言わせるような人物……なんて面倒で厄介な立場。
これならジャンの言葉をおとなしく聞いて、実体化なんでせずに裏方に徹しておけばよかった。
手伝いやすくしようとわざわざ囚人服をくすねて男性化までしたのが、まさか裏目に出るとは…。

タイミングの神様、仕事しろ。


「ハッ、こんなガキが役に立つのか?」

「わたしはガキじゃありません、きみよりは大人ですよクソガキ」

「テメッ…!」


そんなに幼く見えるのだろうか?と首を傾げたくなる。
今の身長はジャンやイヴァンとほぼ変わらないというのに…イヴァンの言葉につい態度悪く返してしまい少しだけ後悔した。


「待てイヴァン。ジャンはオルメタに誓った……言ったことが本当にしろ嘘にしろ、処遇を決めるのは少し様子を見てからでも遅くないだろ」


怖い顔でわたしを睨み付け、今にも殴りかかりそうなイヴァンを止めたのは意外にもルキーノだった。
わたしの髪から手を離したかと思えば今度は顎を掴み、顔を近づけて品定めでもしているかのように細めた目で見てくる。
そして指の腹で肌を撫でると満足そうに口元を緩めた。


「ほぅ…上等だ。男なのが惜しいな」

「そうですか。顔が痛いからそろそろ離して」

「犬というより、懐かない猫だな」


睨みつければ、鼻で笑われようやく解放された。
もう顔も見られてしまったので開き直り、視界を狭める邪魔な髪を手グシで全部後ろへ流していく。
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