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Fortuna【ラッキードッグ1】

第5章 ×3章の後半ボツ話×


組織(マフィア)にとって掟(オメルタ)は絶対だと聞いたことがある。

そこまで信頼してくれるのは嬉しいけれど、絶対敵にならないとは言いきれない。
直接害はなくともジャンの健康的未来の邪魔になるようであれば、わたしは躊躇なく至極アッサリ彼らの敵になるだろう。だから…

…ーーわたしのことに命まで賭けてほしくないんだけどなァ。

複雑な心境で口を閉ざしていると、代わりとばかりにベルナルドが尖った声を上げた。


「ジャン!正気なのか?」

「おい、ジャン。今回ばかりはベルナルドと同意見だ、クソが」

「ジャンさん……どうして、そこまで……敵になる前に、俺が殺します。…安心して、ください」


珍しくイヴァンが誰かに同意しているが、それはどうでもいい。
残りの一人が、わたしを物凄く冷たい目で見据えながら殺気を飛ばしてくる。

誰かこの美人さん、止めてくれません?
ハッキリ殺すって宣言したんですけど。


「みんなの意見はもっともだと思う。だけど、残念ながら俺は正気だ。ソイツはなんてーか、俺の身内?みたいなもので……アー、ちょい顔見てみ?」


わたしの為に頑張ってくれているジャンの言葉に、仕方なく大人しくしていると。
肩を掴んでいる手が離れて、顔を隠しているグチャグチャの髪を乱暴にかき上げた。

ちょっと、痛いんですけど。
ジャンとお揃いの美しい金髪が抜けたらどうするの?

わたしはジャンと同じ色の髪と瞳をもっている。
しかも今は男性化したことにより、ただでさえどこか似た雰囲気の顔立ちがよりジャン似な相貌となっていた。
従兄弟か兄弟かってくらい。
それを見た全員が驚きに目を見張り、ジャンとわたしの顔を交互に確認する。


「……驚いたな。ジャン、まさかお前に血縁者がいたとは知らなかった。なんで教えてくれなかったんだ?」


ジャンに問いかけるベルナルドの言葉は、普段の穏やかなものに戻っている。
でも一瞬、その瞳に厳しい疑惑の色が浮かんだことに気づかないジャンではない。もちろん、わたしも。

バレバレですよ?おにーさん。
まぁ、隠す必要もないんでしょうけど。


「ごめんね、ベルナルド。今はまだソイツの素性を隠しとかなきゃなんなくてさー…脱獄成功の為にも」


ジャンのその言葉に、再びわたしに全員の鋭い視線が突き刺さる。

…ねえジャン、わざとじゃないよね?ソレ。
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