第1章 女神の軌跡(1)
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気がつけば、わたしはわたしじゃなくなっていて。
人間ですらなくて、何故か昔のアメリカにいて。
寝ぼけた頭でボーっとしながら、孤児院の可愛らしい顔立ちをした金髪少年が身につけている指輪の中にいた。
目覚めれば、不思議と自分がどんな存在なのか…どんなことが出来るのかが、なんとなくわかっていたから。
少年の母親の形見である金のリングの中から、ためらいつつも明るく「チャオ〜」なんつって出てみたら激しく驚かれて泣かれました。
いやー、あのときは焦ったよ。
本気でどうしようかと思ったもん。
「…や、フツー泣くんじゃね?透けてたし。俺、トゥーナのこと幽霊かと思ったし」
「ジャンってば、こんなブロンド美人にむかって失礼しちゃうわー」
幸運の女神・フォルトゥーナだからなのか知らないけれど。今の自分、信じられないくらい美人です。
サラリと長く腰まで伸びている、ジャンとお揃いの美しい金髪。
同色のマツゲは伏せると影を落とすほどの長さでクルッと外側を向き、二重の大きなアーモンド型の瞳は蜂蜜色に輝き。
小ぶりの鼻はツンと綺麗に尖っており、太すぎず細すぎない形のよい眉は整えずとも自然なカーブを描く。
やわらかそうな唇は、常になにか誘っているように紅く艶めいて、滑らかでハリのある肌は透きとおるような白さでシミひとつない。