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Fortuna【ラッキードッグ1】

第4章 女神の軌跡(4)


背筋をグ〜ッと伸ばして鬱陶しく垂れた前髪をかき上げると、ジョシュアを見送って通路に出たジャンのところへ歩きだす。


「――さて。何の話だったっけ、イヴァン様」

「……イヴァン『様』?」


なにソレ…ジャンが呼んだイヴァンの様付けに少々引っかかりを覚えつつジャンの右腕に抱きつき、いつもみたいに頭を肩へ預けようとして気づく。


「それ、もういい」

「何がもういいんだよ、イヴァン様」


位置が低い……あ、今ほぼ身長差ないんだった。
それならと抱きついた腕から離れ背後に回り、おんぶしてもらう要領でジャンの肩へのしかかりギュウと抱きしめる。

これはこれでいいなぁ…抱きしめやすくて。
男の姿も悪くない。


「その言い方、馬鹿にしたみたいに聞こえるんだよ、元に戻せ!!」

「あいよ、イヴァン」


わたしが呑気にジャンで癒やされている間にも、二人の会話は進んでいく。


「…あーあ…無駄な時間、過ごしちまったじゃねぇか……頼みてー事あったのに」

「何だよ」


イヴァンに頼み事っていうと…脱獄関係か。
ジャンの背後霊状態なわたしをイヴァンは横目でチラッと見るが、とくに文句をつけたりしなかった。


「イヴァンさんはこんな事したこともないだろうしなー」

「なんだと?言ってみろよ、やってやらない訳でもねぇ。ココ出るのに必要なんだろ?」

「超必要」

「言ってみろよ!!」


どうやら、イヴァンは意外とのせられやすいらしい。
わたしが邪魔でイヴァンからはわかりづらいかもしれないけど、イヴァンの単純な反応に少し楽しそうなジャンの横顔が見える。

こういうタイプからかうの好きだよね……わたしも嫌いじゃないけど、うん。


「例えば情報とか武器とか……他にもだな」

「んなもん、どうやって…」

「無理にとは言わねぇ」


それまでわたしを空気のように扱っていたジャンが、自然な仕草で手に触れながら目配せをしてきた。


「無理にとは」

「……」


――ああ、なるほど。

“無理”を強調したジャンの言葉に、考えるように黙ったイヴァンを見てわたしは数分ぶりに口を開く。
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