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Fortuna【ラッキードッグ1】

第4章 女神の軌跡(4)


だんだん早歩きになる足でジャンが居るはずの独房へ向かう。


「『かーわいー』って…」


ジャンのこと、かわいい金髪のわんわんとか言ったぁあ!!
今すぐ完っ全にブラックリスト入りだ。


「ジャン、いるかなー?いるよね気配あるし」


実体化してる今なら抱きしめ返してもらえるから、たっぷり抱きついて心を落ちつかせよう。
ジャンで心の癒しを補給しよう…そう決めて、ジャンの独房まであと一歩の距離で聞こえてきた声。


「この顔でボスに媚びやがったな!?女みたいによ!!」

「――はっ。男の嫉妬は見苦しいぜ、イヴァン様?」


鉄格子の向こう側に見えたのは……地べたに仰向けに転がっているジャンと、その上に馬乗りになって拳を握ったイヴァンの姿。
考えることもなく、ごくごく自然に体は動いていた。

表現するならドカッだろうか、バキッだろうか…聞こえたならそんな効果音を立ててイヴァンの背中を思いきり蹴りつける。


「っ!?」

「チッ…」


…渾身の力を入れたっていうのに、少し前のめりになっただけでよろける素振りすら見せない。
なんて頑丈なんだ、少しはダメージ受けろ。


「ねぇ、なに、して、るの、イヴァン」


ジャンに手を出すやつは誰であろうと許しません!…二重の意味で。
動く気配のない背中を後ろから、刺々しい声と共に何度もゲシゲシ踏みつけてやる。


「っ、ぅ、ぐ」


ん?…今の、イヴァンの声じゃないよね。
もうちょい下の方から…。

踏まれた振動で小刻みに揺れるイヴァンの下から微かに聞こえた呻き声に、足を止めて視線を落とせば。
下敷き状態で少し苦しそうにしているジャンと目が合った。


「ごごめんジャン!!!!」


頭に血が上ってうっかりしてた!そりゃ苦しいよね!
慌てて足を下ろし、ジャンの上から退かそうとイヴァンを横からグイーっと押してみる。


「ごめんね大丈夫?すぐに退けるか…」

「ファック!テメーなにしやがるっ」


とりあえずジャンを救助しようとしたら今まで不思議と無反応だったイヴァンに、ガッと胸ぐらを掴まれた。
…もう復活しちゃったの?まだ固まってくれててよかったのに。
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