第4章 女神の軌跡(4)
「いや、それは、まぁ……大人になって美人さんになったなーとか、いい声だなーとか、ちょいちょい仕草や表情が無駄にエロいなーとか…思ったりはするけど」
「充分なんじゃないか?」
「えー…いや、どうだろう…ジャンが女とSEXして帰ってきても、とくに嫉妬も何もないし」
恋愛感情あったら嫉妬くらいするものじゃないの?
今のわたしにはよくわからないけど。
顔を横に向けると目の前に、いつの間にかわたしの肩に埋めるのを止めていたルキーノの驚いたような顔があった。近い。
「ジャンは他の女とよくヤッてるのか」
「さすがに頻度は知らないけどね…今のところ、特定の人はいないみたい」
「トゥーナとは?」
「なんでジャンがわたしとヤるの?」
小さいときからよく知ってる保護者みたいな存在とヤるとか考えないでしょ。
ジャンの容姿と性格なら、そこそこモテるだろうし。
……親バカの贔屓目じゃないよ、ほんと、可愛いんだからねあのこ。
また首を傾げそうになったけど体勢的にムリだったから、不可解さを表情に現したらルキーノも似たように眉を歪める。
「あいつ本当に男か」
「どういう意味?立派かどうかはともかく男ですよ、見たことあるし」
「見るものは見てる、と」
「言い方……昔から一緒にいるんだから見たことあってもおかしくないでしょ」
べつに、わたしが変態的な意思で見たワケじゃない。
だってジャン、わたしがいても平気でパンツ脱ぐことあるから自然と目に入っちゃうんだよ。
不可抗力だ。
「…聞けば聞くほど、おかしな関係だな。さて、話は終いだ…これ以上のノロケはよそでやってくれ」
髪からもお腹からも手を離したルキーノが、トンとわたしの肩を押した。
促されるまま解放された体を彼の膝の上からどかそうとして、肝心なことを伝えていないことに気づく。
「言い忘れてた」
ルキーノの固いしっかりとした太股に手をついて、体ごと後ろに向ける。
目をしっかり会わせると、逃げられないよう色男と称されるその顔を両手で包み。
「もうお分かりの通り、わたしはジャン贔屓で狭量な女神だけど……アナタがあのこの味方でいるうちは、わたしもアナタの味方でいる。そう誓う」
真剣な声音で告げれば、一瞬だけ驚きに見開いた瞳がこちらの真意を探るように煌めき。