第4章 女神の軌跡(4)
大きな掌と太い指が、脇腹からお腹をゆっくりと撫でて…………くすぐったくて仕方ない!
「…まさか、くすぐったいのか?」
「ふっ…ふふっ…ふくくっ、ヤメ…お腹、さわらなっ…ふふふふ…っ!」
逃げたいのに逞しい左腕で下腹をがっちりホールドされてるせいで、上半身をよじって震えることしか出来ない。
なんの拷問…!?
「フム、初々しい反応だな……女神の体は、想像以上に清らかなようだ」
「……はぁ……なに言ってるの、意味不明なんですけど」
どうやら、くすぐりの刑は終わったらしい…苦しかった。
ぐったりと背中からルキーノに寄りかかると、小さく笑うように息が漏れる音が聞こえてお腹のホールドがゆるんだ。
…あ、今なら逃げられるかも。
そう思って背中を離した途端、力強く引き寄せられてまたルキーノに体重を預ける。
「おっと、話があるって言っただろ」
「じゃあ早く言ってください」
「まぁ、そう慌てるな」
ジャンとお揃いの色をした金の髪をひと撫でされ、さらりと横髪が持ち上がって耳のすぐ傍にルキーノの唇が寄せられた。
「…近い、くすぐったい」
「大人しく耳を貸せ」
くすぐったいの、嫌なんだけど…。
早くジャンのところへ戻るため、多少のくすぐったさは堪えることにして耳を澄ます。
「ジャンのように、実体化しなくても常にトゥーナが見える方法はないのか?」
「なんで?」
「これから行動を共にするんだ。会話もできない姿も見えないじゃ、いざって時に困るだろう……俺たちには見えて他のヤツらには見えないというのも、役立つことがあるかもしれない」
「たしかに…それは一理ある、かも…」
納得できなくはない、でもなぁ……ちょーっと抵抗あるっていうか、なんていうか…うん。
「…とりあえず、ジャンに相談してみる」
そう言ったら、何故かルキーノが黙ってしまった。
てっきり「あぁ、そうしてくれ」って頷くかと思ったのに。
気になって顔だけでもルキーノに向けようとしたら、突然肩に顔を埋められた。