第3章 女神の軌跡(3)
わたしはそのままドアの横に座り込んで、誰かがこの部屋に入ってくるまで待つことにした。
『Don't lose luck LUCKY DOG♪ Don't be slow,I'll go♪ 』
今ごろになってスラスラ歌えるようになるとは思わなかったなぁ。
女神のスペック半端ない。
『きみのことジャッン、ジャッンにしーてやんよー♪』
あ、ダメ駄目。
ジャンでいっぱいにしちゃったら駄目だよ危険。
『ジャーンー、ジャーンー、ナイトフィーバー♪』
夜にフィーバー駄目、絶対。
『…アナタが、望む〜のな〜らば〜、犬のよう〜に従順〜に〜●●に▲▲に×××に〜縛られてアゲマショ〜』
どうしよう、もうフラグしか立たない…………選曲が悪かったんだ、きっと。
ひまを持て余して記憶にある懐かしい歌を口ずさんだりしていると、チャンスはやってきた。
近づいてくる足音がすぐ側で止まり、ガチッと鍵の開いた音が聞こえる。
ドアが開かれるタイミングを見計らって、囚人服が引っかからないよう見つからないように気をつけながら素早く隙間から出た。
お疲れさまでーす。
あー、長かった……覚えてるJポップや童謡だけでは足りず、ボカロメドレーにゲームのOPを延々と繰り返し、たまに替え歌ブチ込むくらいには長かった。
解放された喜びに拳を天井へ突き上げる。
でも、浮かれてる場合じゃないんだよねー…早くどこかに移動しないと。
わたしの姿が見えないってことは、囚人服だけふよふよ浮いてるように見えるワケで。
……刑務所で心霊現象とかシャレにならない。
『ジャン、どこかなー…?』
リングを通じてジャンの気配を探ってみる……運動場の近くにいるみたいだ。
ジャンのところに行く前に着替えよう。
力使っちゃうけど服ごと転移だ、これはしょうがない。
てきとうな場所に現れると周りに誰もいないことを確認して…ポンッと実体化。
こんなところに女がいたら不自然だから体を男に変化させて、拝借してきた囚人服にモソモソ着替える。
……パンツだけ女物だけど…………いいか。
ズボン脱がされることなんてないよね。うん、ないない。
ジャンと同じ色をした金の長い髪は綺麗すぎて目立つから、ぐしゃぐしゃにかき混ぜる。
いつもは真ん中から左右に分けて流している長い前髪を前へ垂らせば、顔も隠れて一石二鳥。