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Fortuna【ラッキードッグ1】

第3章 女神の軌跡(3)


『あぁ、さっきの。ジョシュアは特別だよ、ジャンがいつも迷惑かけてるからね』

「それだけ?」

『うん、それだけですけど』


そう言うと何故かジャンは大きく息を吐いた。
…え、なんで?
顔を後ろから覗き込むと、横目でチラッとわたしを見て。


「なんでもねぇ。……俺にもしてくれる?」


おねだりなんて、どうしたの?最近よく甘えてきますね。
嬉しいけど、ツンな時期があったから反動が怖いなぁ。

そんなことを思いながらも頬へキスをすれば、ジャンは口元に小さな笑みを浮かべて首から下げたリングに唇で触れた。


「グラ〜ツェ」

『はーい。今日もジャンが無事に元気で過ごせますように』


今日もアナタに幸運と女神の祝福を。
そう言ったら、ジャンが変な顔をして首を少し傾けた。


「その、無事ってのやめねぇ…?なんか俺が危ないみたいじゃん」

『ええー、ヤダ、やめない。危ない目なら前にもあったでしょ、忘れたの?』

「…忘れちゃねーけど」


あのゲーム、どんなルートでも危険が付き物なんだよ。
未来なんてヒヨッコ女神のわたしにはわからないけど。
用心しておくに越したことはない。無事なの大事。


『とにかく、これは譲れません』

「…ハイハイ、わっかりましたァ……ラストガム発掘〜」

『またベッドの下に隠してたの?食べるのは止めないけど…ちゃんと歯みがきしないと駄目だよ。昨夜も磨いてないよね?すぐサボるんだから…』


朝イチでガムを噛みはじめるのを見てつい口を出すと、ジャンの顔が「ウルサイ」とばかりに渋くなる。

わぁ、かわいくなーい。

もう小さい子供じゃないんだから、最低限の身嗜みくらい気にしてよ…お風呂とか歯みがきとかさ。
すでに人の話を聞いていないジャンを呆れ気味に眺めていたら、突然その顔が不自然に背けられた。
なんだろうと逆にそっちを見たら…。

ガンッ!

いきなり蹴られた鉄格子がうるさく音を鳴らして揺れた。
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