第3章 女神の軌跡(3)
「わかったよ、ジョシュア」
やっと観念したのか、ジャンが頭をバリバリ掻いて上半身を起こす。
あ、また寝癖ついてる。
「チャオ」
『チャオ〜』
ジャンはわたしじゃなくてジョシュアに言ったんだろうけど、笑顔がかわいかったから手を振って返してみたら……当たり前にスルーされた。
ジョシュアが見てるもんねー、わかってるよ大人しくしてますよ。
「お前の顔を見るとホッとするな」
せつない…癒しを求めて、ジャンに話しかけるジョシュアの背中にぴとっとくっついてみる。
実体化してないこの状態で触れても、ジャン以外の人間はなにも感じないからさわり放題だ。
「へぇ。俺ってそんなに癒し系?」
軽い調子で返すジャンの目が一瞬だけこっちを見て、またジョシュアに戻った。
……なんだろう?
「バーカ。昨夜の間に脱獄してなくてよかったってことだよ。もう四回だぞ、幸運な奴め」
えーと…すみません。ソレ、わたしの力のせいかもしれない…ごめんねジョシュア。
お詫びになればと頬へキスをして、ほんの少し幸運をわけてみる。
「なっ…!」
「っ、ジャン?…どうかしたのか?」
『どうしたの?』
ジャンが急に声を上げてこっちを凝視したから、ジョシュアが驚いてびくっと体を震わせた。
「や、なんでもねー。マジで女神のネーチャンが見えただけ」
「ったく、まだ寝惚けてるのか。例のアレでお前も大変だろうが、今回は大人しくしててくれよ」
ジャンには本当に女神が見えてるんですけどね。
…にしても、ジョシュアじゃないけどさっきのジャンはなんだったんだろう?
内心首をひねりながら、仕事の続きに戻っていくジョシュアに手を振った。
「…トゥーナ」
囁くように呼ぶ声が聞こえて振り向く。
やっと、わたしの時間ですか?かまってくれるの?
ジャンが小声で話しやすいように傍まで行くと、ベッドに上がって背後から抱きしめる。
『おはようジャン、さっきはどうしたの?』
「アー…トゥーナ、他のヤツにもキスすんのね」
あら珍しい、今日は朝から会話してくれるんですね……ってキス?