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Fortuna【ラッキードッグ1】

第2章 女神の軌跡(2)Gian side


心地よさに目を開けていられなくなってきた俺を見て、トゥーナがクスクス笑いながら頬にキスをしてくれた。
俺も返そうかと思いはしたが、あまりの眠さにもう瞼が上がらない。


「悪ィ、寝るわ…」

『うん。おやすみ』

「おやす、み…」


もう声も出せない。だんだん全身の力が緩んでいく。


『おやすみなさいジャン。……わたしのかわいい愛し子。どうか良い夢を』


沈んでいく意識の中で、昔からトゥーナが寝る前によく囁いてくれた言葉が聞こえた。
いつまで子供扱いしてんだと言いたくなったが、彼女ならきっと……わたしよりは子供じゃない。そう笑って返すのだろう。

いつか笑えなくしてやる。近いうちに絶対。
心に決意しながら眠りの渦へと落ちていった。


その日は、夢の中までトゥーナ一色だった。

実体化していないトゥーナは、完全に地面に足をつけることはなく微妙に浮いている。
壁をすり抜け、扉も開けることなく通り抜ける。かと思えばイスに座り、ベッドに寝転がり、毛布をかぶる。

なんとも非常識でフザけた光景だ。

仮にも女神だというのだから、人の常識で考えること自体間違っているのかもしれないが。
興味本意で聞いてみたら……触れる触れないはわたしの意思と力加減……とのこと。

女神の力加減ってどんな?
わからないことでムダに悩んでいるうちに夢から覚めた。


自然と浮上していく意識にうながされ目を明ければまだ暗い闇の中、目の前にはぼんやり輝いているようにも見えるトゥーナの寝顔。
彼女を抱き枕にしたおかげで体は温かく、早朝の冷気で顔だけがひんやりする。


「ふあああ……」


至近距離であくびをしてもトゥーナの瞼はピクリともしない。
警戒心ゼロか。……教会で崇められてる神様ってヤツも、こんな風に熟睡すンのかね。

そんなことを思いながら見つめていると赤い唇が目についた。
辺りはこんなに暗いというのに赤いのがわかるのは何故なのか……本当にトゥーナ自身が明るく光っているのか、そう見えているだけなのか。
実体化していない姿は自分にしか見えないので解明しようがない。
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