第12章 新人
バンッ!
中也は乱暴に部屋を開けて、出ていってしまったのだった。
「「……。」」
ポツンと取り残された2人は、怒りの矛先がどうやら違う方向に向いたことに取り敢えず安堵の息を吐く。
「あの、これ………貴女が作ったんですか?」
「違いますっ!私は渡すように頼まれただけで……!」
慌てて否定する樋口。
その可愛らしい弁当をチラッとみて「こんな凝ったお弁当なんて作れるわけないじゃないですか……」と何故か落ち込む。
「恐らく太宰さんの仕業ではないかと思います」
「太宰幹部が、ですか?」
「中原さんがあんなに怒鳴る相手なんて太宰さん以外、心当たりがありません」
「そうなんですか。お詳しいですね」
「いえ。私もつい最近まで太宰さんの事を知りませんでした。然し、中原さんが『あの女』と度々、怒鳴っているのは目撃したことがあって、つい先日、先輩から『あの女とは十中八九、紬さんの事だ』と教えてもらったんです。ですから今回も恐らくーーー」
……………………………………………
脇目もふらずに太宰紬の執務室に向かっていた中也は目的の部屋の前から立ち去ろうとしている人物と出会した。
「中原さん」
「おう芥川。紬は中か?」
「否。紬さんは不在です」
「あ?だったらその手に持ってるヤツは如何したんだよ。彼奴の指図書だろーが」
「……扉に貼ってありました」
くるり、と。
手に持っていた封筒の表側を中也に向ける。
『芥川君へ。午後からの巡視についての指図書在中。報告は18時以降に 紬』
「……。」
「……中原さん?」
中也は再びワナワナと震え出す。
「だー!糞ッ!あの馬鹿18時までサボる気満々じゃねーか!!!!」
ダンッと地団駄を踏むと中也は「絶対に殺す」等と叫びながら自室へと戻っていった。