第12章 新人
中也は数分足らずで自室へと戻ってきた。
ビクゥッ!
先刻の怒りが倍増していることに思わず怯える2人。
「紬のヤツ、何処に行きやがった………」
戻ってくるなりスマホを取り出して電話を掛け始める中也。
その呟きを聞いて「矢っ張り太宰(幹部)さんが犯人だったんだな」等と心の中でぼやく2人。
『お掛けになった電話は現在、電波の届かないところか電源が切られてーーーーー』
「…………帰ってきたら覚えておけよ、この糞女」
ピッと通話を切ってスマホを投げ棄てるように机に置いた。
そして、その端末の待ち受け画面に表示されている『ある数字』に気付き、黙り込む。
「………。」
「「……。」」
何て声を掛けるべきか。
それよりもどうやってこの場を去るか。
山吹は兎も角、樋口は盛大に思考を凝らす。
「山吹」
「はぃ!?」
「……何だあ?その声」
突然、話し掛けられて声が裏返ってしまった山吹。
「まあいい。手前も昼メシ食ってこい。んで、終わったら樋口」
「はぃ!?」
そして更に、振られると思っていなかった樋口の返事も裏返る。
「……何なんだよ手前等は。ったく」
自分の苛つきのせいで怯えている、なんて事に気付かない中也は溜め息を着いて、また口を開いた。
「で、樋口。お前の昼休憩が終わったらソイツに武器の使い方を仕込め」
「は?いや、一寸待ってください。私、昼から別の業務が!」
中也の指示に樋口は慌てて返答した。
そう。
樋口が慌てるのも無理はない。
何故なら、その業務と云うのはーーー
「巡視だろ?安心しろ。芥川に話しは通してあるから」
「なっ………!一体、何時の間に!?」
「あ?たった今だよ。紬の部屋の前に居たから」
「そ……そんなぁ~~!!酷い……先輩………」
ガクッと項垂れる樋口に中也は少し驚く。
「何だよ……厭なのか?」
「…………いえ。了解しました」
「………。」
あからさまに落ち込んだ様子で「失礼します」と退室していった樋口をポカンした顔で見送る中也。