第12章 新人
ポートマフィア幹部執務室ーーー
「ーーー以上が、現段階で既に決まっている俺の仕事だ」
「判りました」
椅子に座って自信の手帳を見ながらスラスラと云い続けた中也の言葉を逃さないよう、凡て自分の手帳に書き記す山吹。
「あの。復唱して宜しいでしょうか?」
「面倒だ」
「然し、間違いがあっては…ではその頁だけ拝見させて下さい」
「断る」
「……。」
サッと手帳を内ポケットに仕舞う。
「簡単に解読出来るようには書いてねえ。手前も情報を残すならそのくらい配慮しろ」
「!はいっ」
「それと、今のはあくまで予定だ。そして、俺の予定は確実に狂う」
「え?」
コンコンコン……
何故ですか?と質問しようと口を開いたが
来客を報せる叩敲に返事する中也の声に遮られてしまった。
「失礼します」
入ってきたのは樋口だった。
「珍しいな、何の用だ?」
「あの、此れを」
「?」
渡されたのは紙袋だ。
勿論、中に何か入っている。
「今すぐ開けて下さい」
「?ああ」
紙袋から出てきたのは黒のハンカチに包まれた四角の塊。
その結び目を解いて現れた箱。
その蓋をカパッと開けて、全員がピシッと固まった。
某有名キャラクターの顔を象ったお握りに、ヒヨコやらウサギやらハートやら。
凡てがメルヘンに変形しているおかずたち。
美味しそうではあるが、見た目が異常なそれを誰もが注目して数分後。
「…………………おい」
漸く、中也が言葉を発した。
その声はドスの聞いた怒りそのもので2人ともビクッと肩を弾ませる。
「樋口ィ……これは一体、如何いう了見だあ?あ"あ"?」
「いえっ!あのっ!此れはっ……!」
手をバタバタさせながら言葉を探すが見付からずに慌てる樋口。
「……中原さんのご趣味なんですか……?」
「ンなわけあるかぁ!!云え樋口!何の心算だ!?」
「いや、ですからっ…そのっ……!」
中也の剣幕に圧されて完全に青い顔で手をバタバタさせる。
「大した嫌がらせっ……………!」
「「?」」
突然、ハッとして中也が言葉を飲んだ。
それを不思議そうに見る2人。
そして、次の瞬間にはプルプルと震え始めた。
「あの女ァ~~~~!!!」
脳裡に浮かんだ答えに中也は大声で叫んだのだった。