第12章 新人
「何度も云っているけど『楽園』の持つ効果は『催婬作用』と『感度の向上』と『依存性』」
「?」
先刻、聞いたばかりなので当然に覚えている敦だが、答えには行き着かない様子だ。
「敦君の手にしている資料の男、舌を噛み切って自害する前に叫んだりといった異常行動がみられた旨の記載があるでしょ」
「あ、はい……」
「『楽園』に、『幻聴』や『幻覚』といった類いの副作用は無いのだよ」
「えっ!」
「使い続けると、どんなに疲れていても性交渉をしなければ落ち着かない身体になってしまうーーーつまり興奮状態が収まらないだけ。強いて挙げれば不眠と栄養失調かな?それすらも面倒がって性交渉だけを望むようになってしまうからね」
「それはそれであれですけど………そうなんですね」
資料に眼を落として最後の一文を眺める。
「じゃあ………」
『新種の危険薬物の可能性大』
「何にせよ『楽園』も絡んでるんじゃあ、一筋縄と云うわけにはいかないだろうねえ」
太宰は空を仰ぎながらぼやいた。