第12章 新人
ポートマフィア首領執務室ーーー
「失礼します」
そう云って入室する中也と紬。
入室すると直ぐに、首領の前に立っていた人物が一礼して下がる。
ーーー女性のようだ。
「おや。紬君も一緒か」
「呼ばれていると聞いたものですから」
紬はその女を一瞥して、中也に引き摺られていたせいで乱れた服装やらを正しながら返事する。
「そうか。早速で悪いんだけど…早急に解決して貰いたい案件が有ってねえ」
「例の、ですか?」
「そう。此れを見給え」
そう云って渡されたのは本日の朝刊の一頁。
中也と2人で仲良く観る。
『スクランブル交差点に暴走車突っ込む 18人死傷』
と大きく書かれた記事だった。
『運転していた26歳の男性を逮捕するも突如、狂ったように叫び出し、舌を噛みきって死亡した。警察は危険薬物の使用を視野に入れて捜査している』
と、見出しの詳細が書かれている上、
『一昨日は、若い男女が全裸になり、ビルから飛び降りる事件も発生していることから、警察は新種の薬物が出回っている可能性があるので絶対に使用しないようにと注意を呼び掛けている』
という言葉で締め括られていた。
「『例の薬』と関連しているか定かではないが、私たちの領域に私たちの関知しない『何か』が侵入していることは確かだ」
肘を付いてのんびりとした口調で告げる森だか、その眼光は鋭い。
「承知しました」
紬は新聞を森に返して一礼する。
その返事を聞いて森はニコッと笑った。
そして、何かを思い出したように「そうそう!」と続ける。
「此方においで」
「「?」」
そう呼ばれて近寄ってきたのは先刻、下がった女性だった。
「立て続けの任務で大変だろうと思って紬君に秘書を用意したんだ」
「私に、ですか」
紬はチラッとその女を見て、視線を戻した。