第2章 双黒
ところ戻して―――
先ほど太宰たちがすれ違った20人近くが、社長室の前で話しながら太宰達の見送りに行った社長を待っていた。
「無事でしたね」
「ああ。此処の警備を武装探偵社に任せて俺達は散り散りに身を潜めておく。若し、奇襲に来たとして探偵社に捕まえてもらえる―――社長の完璧な作戦の勝利だ」
「陽が上ればマフィア連中はそう簡単に動けなくなる。今日の夜までに取引データを移行、完璧に抹消し、この負債を他の奴に押し付ける」
「此方の方は準備が整ってます」
「でかした!後は………あ、社長!」
戻ってきた社長に頭を下げる。
「全員、無事か?」
「はい!」
確認が終わると全員が部屋に入る。
「では、本日の動きを確認する………ぞ……」
パタンと閉めて自席を見た社長が何かの異変に気付いた。
「おや。もうお帰りかい?外で打ち合わせでもしているかと思ったけどねぇ」
ジャキィッ!
見知らぬ人間がその椅子に座って居たのだ。
目の前にあるパソコンを操作しながらぼやく。
その人物に向かって一斉に銃を構える。
「あ……あれ?貴方は……探偵社の方じゃ……?」
社長が困惑したように云う。
それを聞いて銃を下ろす人間、混乱する人間に分かれる。
「矢っ張り、か」
椅子に座って居た人物は苦笑するとパソコンから付属していたUSBを取り外して立ち上がった。
「君達が素直に『ポートマフィアに狙われている』事を告げていればもう少し長く生きられて居ただろうにねぇ」
「「「「!?」」」」
ゆっくりと近付いてくる人物に慌てて銃を向ける。
「貴方は……一体………」
「私かい?私は太宰。君達の始末を云い渡されたポートマフィアの人間だよ」
「っ!?」
そう告げると同時に一斉に発砲を始めた。
「やれやれ……」
太宰は溜め息を1つ着くと、ゆっくりと男たちに歩んでいった。
「――――『終焉想歌』」
銃声が、物音が。
凡てが静まるまでにそう時間は掛からなかった。