第2章 双黒
「結構なプロジェクトだったんですね」
帰り際に20人近くの人とすれ違い、国木田が話し掛ける。
「はい!それも今日で終わりです!」
爽やかな笑顔で社長が云った。
「本当に有難うございました!」
社長にロビーまで見送られて、
太宰と国木田は探偵社に戻るべく歩き出したのだった。
「良からぬ連中に依頼されてしまったって云っていたが何も起こらなかったな」
「……。」
入り口の監視カメラを止めて無防備を装い、犯人を誘い込む作戦だった。一件、完全不利に思える作戦だが、大規模な破壊まで始まれば、この建物群だ。直ぐ隣の警報に引っ掛かる。
そう提案したのは太宰で、その作戦が幸をそうしたのか。
誰も来ることは無かった。
しかし、太宰の顔は険しい。
「聞いてるのか?太宰」
国木田の言葉にハッとして、顔を上げる。
そして、真剣な顔をして見詰めた。
「国木田君…………」
「なっ……何だ?」
何時になく真面目な顔をしていたため国木田は思わず唾を飲み込んだ。
「眠いよぉ~…」
そんなことだろうと思った。
盛大にため息をつきながらぼやくとトボトボと歩くペースを緩めた太宰の首根っこを掴んで、引き摺るようにして探偵社へと向かったのだった。