第12章 新人
「嫌がらせ……ねぇ」
その意味を瞬時に理解した―――……
渡す相手が自分の大嫌いな人間だと判った途端に眉間に皺を寄せる太宰。
見た目はどうであれ紬の手造り弁当なのだ。
あのちびっ子、羨ましさ余って憎さ百倍………
込み上げてくる苛つきに思わず舌打ちしそうになる。
そんな太宰の顔を見上げて苦笑すると
紬はスッとカウンターを指した。
「因みに治の分はそっちね」
「!」
見ると此方はシンプルながらも彩りの良い弁当が2つ。
放熱中なのか、未だ蓋が空いた状態で並んでいた。
目の前に在ったのに紬の存在に気を取られて気付かなかったのだ。
「要らなかったかい?」
それをジーッと眺めていた太宰は紬の声でハッとして腕の力を込めた。
「ううん」
「それなら良かった。じゃあ朝食の仕度するからシャワー浴びておいで」
「ん」
4年振りに戻ってきた幸せを噛みしめて太宰は浴室へと向かったのだった。