第11章 修復
「ずっと私に対して怒っていると思っていた。会いたいと願っても悉く拒否されていたから。でも、中也が。姐さんが。私に云ったのだよ。『紬は限界だ』って」
「……。」
「そして、もう一度考えた。紬が私を避けている理由を……そしたらねえ、1つ仮説が出てきたのだよ。『もしかしたら紬は、私よりも多くの情報を―――安吾が二重スパイである可能性を想定してたのではないか』って」
「……。」
「そう仮定したら、全部が繋がった。突然の遠出の任を云い渡されて離された事も、不在の間に起こった内容の報告を聞いて紬の予想は正しかったと知ってしまったのだろうという事も、それがきっかけで行方を眩ませた私の意志を尊重しようとしてくれたのだろうということも、凡て、ね」
「……。」
「私はあの日、織田作に『人を救う側になる』約束をした。特に理由無く。強いて云えば何か変わるかと思ってマフィアに入っただけで、執着するほどのものではなかったしね」
「……。」
「ねえ、紬。確かに織田作は私の大切な友人だ。これほどに影響されても嫌ではないほどの大きな存在」
紬は無言のまま、太宰の胸の中に顔を埋める。
「でも私にとって……紬以上の存在なんて在りはしないのだよ」
太宰は優しい声音で云った。
「マフィアを抜けろなんて云わない。紬が生きやすいと思う環境を壊す気なんて無いから。でも私も約束をした以上、マフィアには戻れない。けれど武装探偵社を辞める事は出来るよ。人助けなんて其処じゃなくても出来るからね」
頭を撫でながら子供をあやす様に
どこまでも優しく太宰は紬に云った。
「…………一緒に……居たい」
「!」
ポツリ。
今まで黙っていた紬が漸く口を開いた。