• テキストサイズ

【文スト】対黒・陰

第11章 修復


紬は目を伏せ、少し間をあけて云った。


「困らないのかい?」

「困らない」


それに対して太宰は即答だった。


「治以外の安全を保証しないよ?」

「構わない」

「其方側に行くことがなくても?」

「関係ない」

「大抵、中也と居るけど」

「………私も混ざるもん」

「仕事の話だよ。何だと思ってるの」

「夜伽」

「……。疲れるから止めて」

「嫌だよ」



「………本当に困らないの?」


質問が尽きたのか、振り出しに戻る。

「困らない」

「何を根拠に…っ」

太宰が再び紬に口付ける。
しかし、先程とは違って直ぐに離した。



「私と紬が一緒に居るために必要な理由なんて、この世に存在するわけ無いでしょ」

「……。」



その通りだ、と。
紬は云い返せなかった。

そんなことは紬にだって判っているのだ。



それでも反抗していたのは兄の為なのだから。



悪人が善人に関わったところで大事にはならずとも、
善人が悪人に関われば大事にはならずとも有事にはなるかもしれない。
況してや、彼が身を置くのは正義の元に行動している『武装探偵社』で、立場が危うくなるのは間違いなく兄の方だから―――。



「私が今、治に返事してしまったら…治だけが困るじゃないか」

「困らないって云ってるのに……」


太宰は溜め息を着いた。

「じゃあ、こうしよう」

「駄目」

「……未だ何も云ってないんだけど」

「どうせ『武装探偵社を辞める』って云う心算でしょ」

「中り」

「それじゃ意味が無いじゃないか!私が4年我慢してたことが……全部……」

「紬」


怒りだした紬の頭を撫でる太宰。


「有難う紬。紬のお陰で今、私は前を向いて歩いている」

「……。」

「私がもう少し早く気付けば良かったのだよ。あの日、あのタイミングで紬と離された理由を」

「っ!」

突然、話が変わって。
いや、太宰が始めた話の内容に驚いて紬が顔を上げた。


「そしたら……譬え紬が今のようにマフィアに留まる事を選んでいたとしても、こんな風に別れたりなんてしてなかった筈だ」

「なんで……その事………」


太宰は苦笑した。
/ 357ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp