第11章 修復
紬が肩より少し長い位の髪を完全に乾かしきる頃に、太宰は風呂から上がった。
脱ぎ捨てていた衣類凡てが、先程まで動いていなかった目の前のドラム式洗濯機の中で回っている。
「!」
その上に置いてあるものに気付き、手を伸ばす。
未使用のバスタオル。
それと……
「真逆、あのチビのじゃ…」
と。
一瞬でも思った自分に後悔した。
真新しい下着に、シャツとスウェットズボン。
自分にピッタリのサイズのそれらが
『あのチビ』のためのモノではないことを証明しているからだ。
「…っ!」
太宰は素早く着衣を済ませると紬の居る寝室へと急いだ。
バンッ!
「!?」
荒々しく寝室の扉を開けると、既にベッドに横になっていた紬が顔だけを此方に向けた。
「夜中なんだからもう少し静かにし給えよ」
「~~~~っ!」
ゆっくりと上半身を起こしながら常識を説き始めた紬にガバリと抱き着く太宰。
「一体、如何したんだい?」
状況が分からず、取り敢えず太宰の背中をぽんぽんと叩きながら紬は質問するも太宰は唯唯、抱き締めるだけ。
「治?」
「……………………………もうやだ………」
「!」
背中で動かしていた手を止めて紬が顔を見上げる。
その仕草をいいことに。
「っ!?」
片腕で紬を抱き込んで。
空いた手で紬の頭部を掴んで。
太宰は紬の口を貪り始めた。
何度も、何度も。
「んっ…!……おさっ…ちょっ…っ!」
途中、何かを云おうと試みる紬の行動さえ許さず、太宰は紬が身体を自分に預けるまでその行為を繰り返した。
くてっ、と。
自分の望む状態になった紬を確りと腕の中に閉じ込めて。
紬の瞼に、頬に、首筋に。
己の唇を添わせる。
「……治……?」
「紬………」
酸素が足りてないままの状態で紬が太宰の名を呼ぶ。
少し潤んだ眼で見詰めら、揺らぎ始めた理性を必死に保ちながら太宰は続けた。
「矢っ張り、返事して」
「……。」
「私はもう、耐えられない」
『―――もう二度と私から離れないで』
はぐらかせれた返事を。