第2章 双黒
陽が昇り、朝が来る。
漸く辺りを太陽が照らし始めた頃、とある建物の最上階に位置する『社長室』にある応接用のソファーから身体を起こす人間が一人。
「ふぁ~………」
目を擦りながら欠伸をすると窓の傍に居た男がそれに気付いた。
「異常無しだ」
「そう。張り込みお疲れ様ー国木田君」
国木田と呼ばれた男は時計を確認して、入り口を見る。
「そろそろ依頼人が出社してくる筈だな」
「朝早いねぇー…未だ6時過ぎだよ?」
「其れほどに大事なプロジェクトだったんだろう」
「……プロジェクト、ねぇ」
そう呟いて立ち上がり、伸びをしている男の名は太宰。
2人は『武装探偵社』の社員だ。
武装探偵社とは表と裏の挾間にあるような事件などを請け負う武装集団であり、何故此処に張り込みをしているかと云うと―――
ガチャッ!
「「!」」
「有難うございます‼ライバル会社の連中も来なかったみたいで安心しました‼」
スーツを纏った男性が一人、突然入ってくるなり2人に向かって礼を述べた。
「いえ。しかし、此処まで過敏になる必要は無かったのでは?」
この会社の情報をライバル会社が盗もうと企てているらしく、それを良からぬ連中に依頼されてしまったとかなんとかで、護衛の依頼がきていたのだ。
それで、そのデータがある社長室に1日張り込んで居たと云うわけだ。
「とんでもない!この業界でヒットすること間違いなしのプロジェクトなんです!油断はできません‼」
「はあ……そうですか」
国木田は早朝に聞くには元気すぎる男性の声に顔をしかめながらも相槌を打った。
「しかし、本日だけで良かったのですか?」
「はい!今日の昼にはそのプロジェクトを発表することになっているのでもう安心です!本当に有難うございました!」
社長の秘書らしき男が封筒を国木田に渡す。
依頼料だった。
「それにしても随分早い出勤ですねぇー何時もですか?」
それを受け取った国木田を見てから太宰が口を開いた。
「いえ、何時もではないですよ。そのプロジェクトを昼に発表するにあたっての最終確認とかがありますから」
「お一人で?」
「いえ、今からそのプロジェクトに関わっていた社員も出社してきますよ。その他の部所は何時も通りの九時スタートですけどね」
「そうですか」
この間に国木田が手続きを済ませる。