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【文スト】対黒・陰

第11章 修復



「……。」

紬は何も答えなかった。




「……返事は?紬」




その事に心配そうな声音で問う太宰。



自分の腕の中で。
自分の胸に顔を埋めてしまった紬を見下ろす。


暫くして紬が急にバッと顔を上げた。
そんな紬に少し驚く太宰。



「……眠たい。もう寝る」



漸く帰ってきた言葉にポカンとする。
しかし、紬の身体を解放する程ではなかった。
言葉は返さずとも腕の力は確りとしたものだ。



「聞いていたかい?もう寝る。寝室に行きたいから離し給え」

「聞いてるとも。嫌だよ。寝るなら一緒に寝る」

「それなら先にお風呂に入ってきて」

「……。」


ぎゅーっと紬に抱き着き、首を横に振る。



「………私の要求が飲めないのなら帰り給え」

「やだ」

「じゃあ風呂くらい入り給えよ」

「……………私が入浴中に居なくなる気でしょ」

「え」


漸く見上げた兄は、眉間に皺を寄せ、口を尖らせて駄々こねる子供のような顔をしていた。



紬は長い溜め息を着いた。


「もう寝るって云ってるでしょ」

「……泊まっていいの?」

「お風呂に入るならね」

「……逃げない?」

「だからもう寝るってば」


そう云って兄の頭を撫でる。


「上がってきたら包帯も替えてあげるから」

「……。」


太宰が漸く紬を離した。
そして、云われた通りに脱衣所へ向かう。


紬はその姿を見て苦笑すると寝室に向かった。



箪笥の一段目から下着にシャツと短パンを取り出し、身に付ける。
続いて二段目を開けるとその中に入っていたモノも取り出して脱衣所へ向かった。


「全く。雑なんだから」


脱ぎ捨てられた衣服を乾燥能付きの洗濯機に放り入れて、代わりに手に持っていたモノを洗濯機の上に置くとドライヤーを取って寝室に戻っていった。
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