第11章 修復
紬は部屋に帰り着くと、羽織っていた外套にカードキーを突っ込んだ後に脱ぎ捨て、テレビのスイッチを入れた。
が、直ぐ思い直して電源を切る。
「お風呂入ろ」
くるりと方向転換するとバスルームへと移動したのだった。
―――
シャワーを浴び終わり脱衣場に移動した瞬間に
「!」
紬は何かに気付き、眉間にシワを寄せた。
「……。」
話し声―――否。
『テレビ』から発せられていると想われる『音』を紬の耳が拾ったのだ。
「消した筈だけどねえ」
バスタオルを巻き付け、髪をざっくりまとめ、
ため息まで着いてから脱衣場から出る。
足音を消す積もりも、気配を忍ばせる気も一切無い紬は普段通りにリビングに向かった。
がちゃり、と。
音を立ててリビングと廊下を隔てていた扉を開ける。
が、そこにあるのは電源の入ったテレビだけ。
「……。」
取り敢えずテレビの電源を切ろうとリモコンを置いたテーブルを目指すべく、足を出した瞬間だった。
ブツン…!
「!?」
テレビが消えた。
と同時に凄い力で腕を掴まれ、引っ張られる。
「……。」
危害が加えられる―――などの衝撃は無く。
しかし、身動きが全く出来ないほどに力強く拘束―。
ただ、抱き締められて。
「こんな夜中に訪問とは常識外れもいいところだ」
紬はその体勢のまま、抵抗もせずに口だけを開いた。
「何の用だい?」
「……。」
相手は答えない。
抱き締める腕の力を更に込めるばかりだ。
………。
それから暫くの間、沈黙が続いた。
恐らく10分以上は何も話さず、動くことも無く時間だけが過ぎていった。
漸く、この状態に終止符を打つ気になったのか。
再び紬が口を開いた。
「いい加減、離し給え。段々、力を入れるから流石に痛い」
少し不機嫌な声で紡がれた言葉に、相手も漸く反応を示した。
ふるふる…。
首を横に振るだけだが。
その仕草に紬が溜め息を着く。
「離して」
ふるふる。
「こんな格好だ。寒い」
ぎゅーっ。
「だから痛いってば」
「……。」
少し緩められる腕力。
反応は返って来るが、無言のままの相手に
とうとう紬が顔を見上げた。